「国を散策に行くんだったら
 ドレスは辛いだろう?」

ドアのほうでテラスの声がした。

「行くんだったら昨日着てた
 奇妙な服のほうがきっといい。」

「せっかくここまで着せたのに…。」

副メイド長の小声の不満のあと、
私はドレスを脱がされ、
既に洗濯されて乾いた制服を着た。

ローファーはまだ乾いておらず、
私は膝までの黒いロングブーツを履いた。

黒が基本のこの制服と
相性が良く、私は結構気に入った。

「じゃあ、いくか。」

すでに着替え終わっているテラスに
連れられて私は城の外に出た。

空は気持ちのいいほどに青かった。

「ユートピアは?」

「さあ?」

即答。
てゆーか、さあ?って…。

私は多少呆れた。

「大丈夫だ。
 ちゃんと戻ってくる。」

少し見上げるほどに
身長の高いテラスの横顔は
完全にユートピアのことを
信じている様子だった。