騎士はキミに恋をする


すぐに、
それはこちらに向かってきた。

初めは、
騎士らしく白馬かと思ったが、
違うらしい。

何故ならそれは空から来たからだ。

どんな動物よりも長い尻尾。
大きな、頑丈そうなうろこで覆われて、
鋭い赤い瞳と、爪と、牙。
そして大きな翼ではためきながら
こちらに向かってくるそれは、

「…。竜?」

「そうだ。
こいつは俺の幼少からの相棒。
名は、ユートピア。」

空から降り立った
竜の鼻先をなでながらテラスが言う。

「こいつは俺以外には
あまり懐かないから、気をつけろよ。」

「何で?」

「噛むから。」

それと同時に、ユートピアが口をあけた。

もう、
のこぎりの歯が並んでいるとかって言う比じゃない。

包丁だ。
包丁がのこぎりの歯のように並んでいた。

「か、噛まれたら?」

「死ぬ。まあ、噛まれた奴は
皆嫌いな奴ばっかだったから
別にいいけどな。」