「さあ、行こうか。
 もうそろそろ宴の準備が整う。」

頭をなでられる気持ちよさに
ぼーっとしていると、
頭の上から声が降ってきた。

「うん、あたし、
 ずーーーーーうっと楽しみにしてたんだ。」

気持ちよさに
まだ半分ほど意識を手放したまま
少女は言った。

「では私は先に言っているよ。」

少女の頭の上から手を離した
お父様が優しく微笑んでから
かき消されるように消えた。

快楽から意識を取り戻した少女は
少しだけお父様のいた場所を
名残惜しそうに見た後、

玖零羽に片手をかざした。

『我、汝を運び出すもの。』

少女が呪文を唱え始めた。
魔法の成功率を上げるためだ。

『世界の最北端の城へその身をゆだねよ。』

玖零羽の体が透け始めた。
そして光の粒子となって消えていく。

『発動。』

その言葉を合図に玖零羽の体はすうっと消えた。