「なんて可哀想なお姫様なんでしょう!」





突然知らない人の声が部屋に響いた。

驚いてあたりを見回すと、
ドアのところに寄りかかるように
赤い髪をした少女が笑って立っていた。

紅いツリ目で、
無邪気そうなその少女は
まだ何も知らない子猫を連想させた。

「お姫様は王子様を愛してる。」

「なのに王子様が愛するのは別の人。」

笑ったままだった少女が
わざとらしく作った悲しい顔で

楽しげに身ぶり手ぶりをしながら
劇をするように言葉を発する。

「こんな悲劇ほかにはきっとないよ。」

「ねえ、そう思わない?」

少女の言葉に
何故か私の体は動かなくなっていた。