騎士はキミに恋をする


アンジェリーナが部屋から出て行った後、
玖零羽はテラスの眠る
ベットの、彼の枕元に行き、

顔を覗き込んだ。

紅い包帯に包まれた顔は、
傷の痛みにうなされることもなく、
静かに、安らかに、
寝息のようなものを立てている。

と言っても、
それは鼻や口に取り付けられた
奇妙な色をした管や、

ベットの横に鎮座する
不可思議な機械から伸びる線が
坦々と、淡々と機械的に
呼吸をさせているのかもしれないが。

ぴこ、ぴこ、と何処かコミカルで
そして何処か陰鬱なその音が、
玖零羽とテラスの呼吸音と
重なり合って聞こえた。

包帯に包まれたテラスの手に
無意識にではあるが、
自分の手を絡ませる。

いつもは温かった手が、
今は、氷とまではいかなくとも、
とても冷たかった。

だから、私はその手を
包帯の上から両手で持って、
自分の体温で温めるように、
放さないように、しっかりと持った。

もっとも、それで体温が上昇するなど、
馬鹿な話があるわけでもなく、
自分の手の中にあるテラスの手は
何時まで経っても冷たいままだった。