アンジェリーナは
先ほどと変わらず、
静かに涙を流しながら、
私をそっ、と抱きしめた。
「私たちの力が足りず、
申し訳ありませんでした。」
口を開いたと同時に聞こえる、
言葉と小さな嗚咽は、
私の耳を通りぬけて、
霧散するように消え失せた。
しばらく、テラスと違う人の
体温と匂いに包まれたまま、
玖零羽は光のない瞳を宙に向けていた。
「……。」
不意にアンジェリーナが
玖零羽からは離れ、
白い服に身を包んだまま、
部屋を後にした。
その時、玖零羽の瞳には、
絶望と自分の無力さを呪う失望が、
そして、アンジェリーナの瞳には、
悲しみと復讐の炎が灯っていた。
2人とも、
自分の瞳に宿る自分の感情を
少しも理解しないまま、
自分の感情のままに
欲望のままに動こうとしていた。


