騎士はキミに恋をする


「て、らす…?」

噛みながら呼んだ声に
テラスは少しも反応しない。

ましてや、
その閉じた瞼から見える長い睫毛が
ほんの少しでも揺れることはなかった。

「玖零羽様…。」

いつの間にいたのだろうか、
玖零羽の背後には
いつもの鎧ではなく、
白衣のようなものに身を包んだ
アンジェリーナが立っていた。

悲しげで、
何かを慈しむ様な、
そんな目をしていた。

「起きてしまわれたんですね…。
 …貴女にだけは、
 見られたくなかった。」

両目に零れそうなほどに
たくさんの涙を溜めながら、
アンジェリーナがいった。

「ねえ、テラスは、
 助かるんでしょう?」

アンジェリーナが
涙を流している事に、
私は心のどこかで
激しい不安に襲われた。

案の定、アンジェリーナは
無言のまま何も喋ろうとしなかった。