あれは、
あの塊は、
テラスの相棒の竜、
「ユートピアっ!!」
私はその名前を
半ば悲鳴にも似た声で呼び、
ベランダから部屋へ
部屋から廊下に出ようとした。
でも、
『ねぇ、王子さまは
本当に君のことが好きなのかな?』
『王子さまは、
前の好きな人の面影を
君に重ねているのかもしれないのに?』
伯爵の言葉が再度、
私の胸に深々と突き刺さる。
廊下へと続く扉の
ドアノブにかけた手が、
ドアノブから離れる。
「…っ!」
頭のなかで、
何かと何かが交錯する。
喉に伯爵の言葉がつまり、
呼吸を止めてしまうような
そんなありもしない錯覚を覚え、
呼吸が苦しくなる。
「はあっ、は、はあっ」
酸素を求め、
呼吸が無意識に早くなる。


