騎士はキミに恋をする


私の手は、
何かを掴みそびれたように
テーブルの上に淋しげに浮いていた。

私は、伯爵の手を取っていたら、
楽になれていたのだろうか?
淋しさなんて忘れることが

できたのだろうか?

はたして、
この手が掴みそびれたのは
希望か、淋しさか。

「玖零羽さま…。」

アンジェリーナが
何処か悲しみを帯びた顔で
ぼんやりと椅子に座る私の名を呼んだ。

「テラス殿は、さっきも言ったように、
 貴女と昔の想い人を重ねて、
 愛すような、そんな方ではありません。」

「でも、テラスの好きだった人は、
 実際にいて、
 死んだんでしょう?」

虚空に浮く自分の手を膝の上に戻し、
自嘲気味につぶやく。

「ええ、でも…。」

「いいんです。別に、」

私はアンジェリーナの言葉を遮った。