刹那、伯爵の陰に
疾風のようにアンジェリーナがきて、
後ろから剣を、伯爵の首に突き立てた。
「おやおや、何の真似だい?」
おどけたように言う伯爵に向って、
アンジェリーナは冷たく言った。
「テラス殿は、
そんな薄情なものではない。」
伯爵を後ろから、
今までになく、
冷たく睨んでいるアンジェリーナに
私の足はすくんだ。
「ふうん、」
伯爵はふざけたようにいい、
「わかった、今日は引こう。」
少し思案するようにして
伯爵は立ちあがった。
それに合わせてアンジェリーナの剣も
首から引かれ、腰の鞘に戻る。
「気が向いたらおいで、お姫さま。」
伯爵は、私の耳元に顔を近づけて
囁くように小さな声で言った。
そして、くるっと身をひるがえして、
扉の向こう側に消えた。


