騎士はキミに恋をする


玖零羽がじっとその傷を見つめていると、
アンジェリーナが気づいたらしく、
苦笑しながら髪を洗い始めた。

「この傷、準1級騎士への
 昇格試験の時についたんです。」

傷がまた、
泡で少しずつ見えなくなった。

「試験内容は、
 自分の相棒となる竜を
 森から1匹従えてくることで、
 
 私はその時に背後から竜に襲われ、
 この傷を負いました。」

「痛く、無かったんですか?」

言葉を発してから、
しまった、と玖零羽は思った。

あんな深く、大きな傷、
「痛い」に決まっているのに、
何故あんな質問をしてしまったんだろう?
と、自分の阿呆らしさを呪った。

「痛くはなかったですよ。
 ただ、大量出血で意識が朦朧として、
 凄く戦い難かったですね。」

苦笑交じりに
アンジェリーナはいった。

「試験は…?」

「何とか合格しました。
 ですが、5,6日、
 死線を彷徨いましたね。」

アンジェリーナが「ふふ、」と
また苦笑交じりに言う傍らで、
玖零羽はほんの少し恐怖した。