騎士はキミに恋をする


「無礼者は貴様だ。」

凛とした声が
庭に静かに響き渡る。

「この姫君を、
 テラス・レオ・ステファニーの
 恋人と知っての無礼か?」

冷たい瞳がさらに厳しくなる。

中年貴族は
テラスの名前を聞くと、
何故かそそくさと逃げ帰っていった。

「助けてくれて、
 ありがとうございます。」

握られていた両手を
ドレスの裾で必死に拭きながら
女性のお礼を言う。

「礼には及ばなないです。
 むしろ、罵られたりしても
 おかしくないです…。」

女性は少し、しゅんとしていった。

「え?なんで?」

「貴女があんな危険な状態に陥るまで、
 私は駆け付けることが
 出来ませんでした。だから、」

「十分、間に合いましたよ。」

彼女の、自分を責めるような言葉を
遮って玖零羽が言う。

「私は、キスなんてされなかったし。
 むしろ、貴方がいなければ、
 私は今頃…。」

そこまでいって、
あの脂ぎった唇が
自分にされた時を想像して、

玖零羽は言葉を切って、
青くなった。