はあはあ、と荒い呼吸が迫る。
玖零羽は何とか逃げようとしたが、
相手の握る手は一向に外れそうもない。
心の中で、
止むことの無い悲鳴を上げ続ける玖零羽に、
中年貴族は一番恐れていた言葉を言う。
「ぼ、ぼぼぼぼ僕と、
けっケッコンしてください!!」
知るか!!
却下!!!!
精一杯の玖零羽の抵抗。
だが、そんなものは
誰にも聞こえるわけもなく、
中年貴族の顔が迫る。
唇を突き出しているところからして、
キスを迫っているのだろうか。
ここも脂汗にまみれた唇が
玖零羽の唇に迫る。
キモイ!キモイ!キモイ!
こんなのが私のファーストなんて
絶対にいやだぁああああああああ!!
玖零羽は必死に首を横に曲げる。
でも、そんなものは無意味とばかりに、
中年貴族の顔が迫る。
玖零羽の目に端に涙が浮かんだ。


