場所は城の広い庭。
赤や白、黄色の薔薇の手入れが
行きとどいていて、
とても奇麗な庭だった。
そこに、1つ、ポツンとある
小さな丸いテーブルと、2つの椅子。
片方の椅子には、中年貴族。
そして、もう片方の椅子には、
玖零羽が座っていた。
凄く嫌な予感がする玖零羽をよそに、
中年貴族は脂汗を拭きながら、
テーブルの上にある、
お菓子や紅茶を飲みながら、
自分の話をかれこれ20分はしていた。
ずいぶん器用な人だな。
と思いながら、
玖零羽は何とか逃げる算段をしていた。
逃げる口実を考えていると、
そこでふと、
中年貴族の話し声が止んだ。
「……?」
中年貴族は意を決したように、
ガタンッと、テーブルに乗り出して、
玖零羽に迫る。
「あの!!」
「はい…?」
中年貴族が玖零羽の両手を握る。
脂汗にまみれた手は、
玖零羽に悲鳴を上げさせ掛けた。


