「ぐあぁっ?!」
1人の兵隊が二の腕を押さえて、
悲鳴を上げた。
1人の黒装束が縄から逃げ出して、
隠し持っていた短剣で
1人の兵隊の二の腕を刺したからだった。
黒装束はベランダの手摺りに
器用に立ち、言った。
「ははは、我らは、
いつか、そこに眠る姫を奪う。」
黒装束はそう言って
ベランダから、ふっ、と消えた。
後の3人もあとかたもなく消えていた。
「ちっ、逃げたか…。」
舌打ちをする。
他の兵隊が取り逃がしたことを
謝ってきたが、
特に気にはしていないと言った。
そして、怪我をした者に、
手当をしろと言った。
兵隊たちは負傷者を連れて
部屋から出て行った。
テラスは床に落ちたままの鞘を拾い、
右手に持っていた剣をしまった。
そして、枕元にしまい、
冷えた体を布団の中に戻して、
布団の中に入っていた
温かいものを抱き寄せた。
今度はそれは呻き声を
上げたりしないで、
大人しく腕の中にいた。


