ー 1年前 ー



「水月(みづき)…。最近、ケータイばっかイジってるけど、何やってんの?」


そう言いながら涼(りょう)もケータイをイジっている。



『まぁ、副業ってトコかな?』



涼とは幼馴染み…。



どちらかというと腐れ縁と言った方が正しいかもしれない。



互いに2歳の頃、孤児院施設で出会った。



名前の無かった彼らは園長に名前を付けられた。



涼は昔から扇風機が大好きで常に目の前を陣取っていたらしく、涼しい所が好きなのだと思った園長は涼という名前を与えた。



水月はというと幼い頃、よく月を眺めていたらしい…。



三日月の夜は決まって夜空を見上げて“今日はミヅキだ”と呟き、それを聞いた園長は水月(みづき)と名付けた。



どんな理由にせよ、名もない俺達に名前というものを与えてくれたコトが嬉しかった。



涼とは施設を出てからも常に一緒だった。



かれこれ19年間の付き合いになる。