「私と加奈は友達だったの…でもそう思ってたのは私だけで、加奈は私から拓也を奪うために…」

「加奈さんと拓也とは今どんな関係で?」


「…付き合ってる。でも加奈が言ってるだけだからわからないんだけど…」


依頼主である早紀の話によると幼馴染である拓也を加奈が騙して奪い取ったらしい。

―さっさと気持ちを伝えといたらよかったのに

そうは思うは依頼の内容とは関係ないし事情があるのであろう、あえて言わないことにした。



「…で、拓也くんと加奈さんを引き剥がせばいいんですね」

「はい。加奈は頭悪いし…仲間に力を借りて奪い取ったらしいので大丈夫だと思うんですけど…」

「…わかりました。ではこの依頼に取り掛かろうと思いますが、本当に、いいんですね?」


急に声色を変え、まるで地獄に突き落とすかのような口調で聞いた

"ここではいと答えれば、後戻りはできない"

早紀は目に先ほどの数倍鋭さを加え、


「はい」



この話を承諾した。


「依頼金に関しましては相手の難易度に換算してお支払いしていただきますので。あ、そうそう。ひとつお願いがあるのですが…」

「はい?」

「依頼を実行するときは依頼主である早紀さんも来てもらう必要があります。引き剥がせたかどうか自分の目で確認してもらうために。」

「ああ、…わかりました。」

少しためらった後に首を縦に振り、話を肯定させた。






「準備が整いましたらメールでお知らせさせていただきます」


「およそどれくらいかかるんですか?」


「…約1週間程度ですかね」


「…わかりました。」



―こりゃ入学して早々忙しい1週間になりそうだ


早紀の家を出た途端に眉にしわを寄せ、いかにも面倒くさそうな顔をしながらその場を後にした。