その日の夜、ナオから電話があった。

「ハル?こないだはややこしい時に電話したみたいでごめん。」

相変わらず冷静で優しい言葉をかけてくれる。

「ううん。こっちこそごめんね。」

「で、そっちは大丈夫だったのかな?タツヤくん・・・だっけ。」

「ああ。うん、まぁ。」

ナオとタツヤの話をするのは気持ちが重たい。

今までの状況と随分違ってきているから。

私の気持ちが不安定というよりも、ナオとタツヤの立場があまりにも差が開きすぎてしまった。

これからニューヨークへ前途洋々に旅立とうとしているナオはタツヤとは正反対の道を進んでいる。

タツヤは、今仕事を失い、路頭に迷っているというのに。


「実は、今週末、僕の両親がこっちに来るんだ。」

ドクン。

そうなんだ。

「もし、よかったら一緒に食事でもどうかなと思って。」

「あ・・・。」

思わず言葉に詰まる。

「いや、別に結婚前提で付き合ってるとかそんな風に紹介するつもりないよ。ハルの気持ちが定まってからそれは伝えるつもりだから安心して。」

そっか。

でも、今はそういう気分になれないんだけどな。

ナオと私の見ている先は、既にずれが生じているような気がした。