清楚で純情で綺麗で優しくて…
そんな大人しげな母は精神的にボロボロだった。
だから、代わりを見つけては、体を満たそうとした。
一時の満足感に母はやめられなくなったんだ。
母は自分のしていることに心を痛めた。
そして、俺が高学年になる頃、男遊びをやめたんだ。
親父は相変わらずなままで…
それから母は親父の自慢話を毎日のようにした。
本当は良い人なんだと、俺に伝えたかったのだろう。
それでも俺は好きにはなれなかった。
許せなかった。
母は、俺にとって誇りだ。
男は父親の背中を見て育つとか、どーでもいい。
ありえないことだと俺は思っているから。
あいつの背中にはいつも、知らない女の手が巻きついてる。
ナイフで切り裂きたくなるような、白い女の手。
その白をその女の赤で。
女も親父も染めてやりたかった。
それでも行動しなかったのは母がいたから。
俺を最優先してくれる母が傷つくことだけは、したくない。
何よりも母が大事だった。
帰れば、母がいつものように迎えてくれる。
そんな温かな幸せを、失いたくなかった。

