義理の母は俺を随分と可愛がった。
義理の父も、同じように可愛がってくれた。
俺はそれが嬉しかった。
初めて温もりを知った俺は、一生この家に居たいと思ったほどだった。
役に立ちたい、と。
そんな時、母が俺に言った。
12になった、俺に母が言ったこと。
「海琉、あなたは恵まれた顔立ちをしているの。
だから、その顔をこれからの人生に生かしなさい?
自分の全てを、生きる力にするのよ?
いくらでも自分を繕ったっていい。
心が折れそうになったら、もう一人の自分を創ればいい。
でもね?心は誰にもあげてはならない。
心を囚われれば、あなた自身が身動きが取れなくなってしまうから。
…どうしても、どうしても。
この人の傍にいたい、共に生きたい…。
そんな人ができた時は、その人に
心を預けなさい。
そして、言葉をあげなさい。
あなたの言葉は、私に何度も心に潤いをくれた。
海琉の言葉には、力がある。
心はあげてはいけない。
だから、大切な人に預けるの。
本当に、1人の人を愛せたとき、貴方の心は鋼になる。
それまで、貴方の心は、誰にもあげてはならない。
負けないで?
どんなことがあっても。
貴方には自分の道を切り開ける力がある。
迷ったら、1度遠回りをしてみるのもいいことよ?
自信があるなら迷わず進めばいい。
正しいと思ったら、前へ進みなさい?
いつだって、お母さんは海琉の味方だからね?
貴方は養子なんかじゃないわ。
大事な、一人の息子よ…。」

