俺は、足を止めた。
穂乃歌まで、もう少し。
耳にかすかに届く2人の声が、俺を苦しめた。
…胸の奥が、痛い。
胸クソ悪い…
「何?会いたかったの?」
『ちッ違ッ!』
俺は再度、歩調を速めた。
「お嬢様、お迎えに上がりました。」
『高野クンッ…!』
何で俺は苗字なんだよ。
そいつは名前のくせに。
「支葵、です…。」
なかなか名前を呼んでくれない穂乃歌。
訳わかんねぇよ。
「支葵って呼べよ。」
「何度言わせれば分かんだよ。」
なんて、俺は穂乃歌を困らせて。
『支葵ッ!』
穂乃歌が俺の名前を呼んだ、瞬間。
さっきまでモヤがかかったように暗く、重かった心はフッと軽くなった。
俺は穂乃歌に、惚れすぎだ。

