『好き』を教えて

「木下さん…?」

「ま、いいさ。ゆっくりとな」

「?…はい」

想ってた女が手に入ったんだ。
今はそれでよしとするか。






「店長」

椅子をギシギシ鳴らしながら店内のモニターを眺めていた店長は俺を振り返る。

「何だ?」

「今夜デートなんです」

そう言って店長に向かって手のひらを差し出す。

「前に言ってましたよね?俺のデートならいくらでも出してくれるって」

「そーだったか?そんな物好きなオンナもいないだろ?」

「残念ながらいるんです」

「ほー。どんなオンナか見てみたいもんだな」

俺は立ち上がってモニターを指差した。

「このオンナですよ」

「慎…おま…」

言葉を詰まらせる店長に、ニヤッと笑う俺。

「店長のおかげで、俺にもカノジョが出来ました」

店長は歯軋りしながらもポケットから財布を取り出した。

「ゴチソー様です。これで高野と美味いもんでも食べてきます」

高野を雇ったのが運のつきだったな、鬼瓦店長。

店長から巻き上げてご機嫌な俺はモニター内の高野に笑いかけた。【了】