「幻歌」

「なに?楓くん」

幻歌が、あどけないけど、どこか大人びたあの時と同じ笑顔を見せた。
それをみて、心の奥がうずくのを感じる。

「なんで……死んだんだよ」

「……それは」

幻歌は、どこか悲しそうな顔をして、顎を僕の肩にうずめた。

「私ね、怖かったの。知らない男の人が、私になにかするんだ、ってわかったときなんだか、すごく怖くなったの」

「それは……仕方ないよ。でも……」

「聞いて、楓くん。私ね、楓くんに拒絶されるんじゃないか、って怖くなったの。いつか、私を避けちゃうんじゃないかって。だから」

「だから、死んで、化けて僕のそばにいようと思った……?」

「鋭いなあ、楓くん」

「伊達に、架南の幼馴染、やってないから、ね」

それは、確かに、まだ幼い僕らが考えそうなことだったから。
二人で、死んでも、一緒にいよう、と約束したから。