その時、教室のドアが大きく開いた。

私は開いたドアに目を向けた。

担任の先生らしき男の人と、朝に会った男の子が入ってきた。

男の子は私の隣の席に座った。

私は驚きでいっぱいで、男の子をただ見つめていた。

・・・隣の席の子だったんだ。

じっと見ていると、男の子と目が合った。

男の子は私に笑いかけてくれた。

それは朝初めて会った時と変わらない、素敵な笑顔だった。

そんな笑顔に私はまた見つめてしまう。

だけど先生の声で我に返った。

「えーと。担任の多原です。教科は英語。
 まだ入学式までまだ時間があるので自己紹介をして。
 出席番号の一番から。」

うわあ・・・。凄く苦手・・・。

そんな事を考えているうちに、隣の男の子の番になった。

男の子はゆっくりと席を立った。

名前は何ていうのかな?

席が隣だから苗字がタ行やナ行から始まる人なのかな。

「椿遥です。ニックネームはハルです。
 1年間よろしくお願いします。」

そう言って笑った。

椿遥・・・。ハル・・・。

私は誰の名前よりも早く、この男の子の名前を頭の中に刻んだ。

そして私の番になった。

私はゆっくりと席を立つ。

皆からの視線が伝わって体が震えた。

「え・・・っと。立花みずきです。
 皆と仲良く・・・なれるように頑張りたいです。
 一年間、よろしく・・・お願いします・・・。」

私は震えた声でそう言った。

息を吐いて席に座った。

そして自己紹介が終わりそうな頃に、放送が流れた。

「入学式が始まります。
 新入生の皆さんは担任の先生の指示に従い、
 廊下に並んでください。」

放送が流れた後、私達はすぐに廊下に並んで体育館へ向かった。

そして校長先生の話を聞きながら私は思った。

高校で友達を作って仲良くしたいな。

中学とは違う自分になりたいな。

椿君みたいに自然で素敵な笑顔が出来るといいな。

・・・・頑張ろう。

私は手に力を込めた。