「じゃあ、ここで」 頭を下げて帰ろうとしたら 「待てって。家まで送るって言っただろう」 そう言って、帰ろうとしない。 それどころか、今度はあたしの手を取り歩き始めた。 「家、どっち?」 「あ、あっちです」 すっかり先輩のリズムに乗せられたあたしは もう先輩に何かを言うのは止めて、ただ黙って繋がれた手のぬくもりを感じながら 「こっちか?」 と聞いてくる先輩に「あっちです」と答えた。