綾乃は、いつものように地下鉄に乗った。

この時間は、いつも空いている。

AM11:00。別に何か目的があるわけではない。

ただ、何となく…。

家に一人でいるのが、つまらないから…。

かといって、出掛けたからって、楽しい事があるわけではない。

買い物?いや、欲しい物などない。

とりあえず、ショッピング街をぼんやり歩く。

そう最近は、ほとんど毎日出掛けている。


 伊藤綾乃、30歳、今のところ専業主婦。

結婚六年目を迎えていた。


 外は、とてもいい天気で、なんかそれも憎らしかった。

自分以外の人は、幸せそうに見えるし、

輝いて見える。

家に一人で居るのも、孤独だが、

出掛けてみたって、やっぱり孤独だ…。


 「あれっ???綾乃?」

きちんとした身なりの、いかにも仕事ができそうな

女性が、すれ違いざまに声をかけてきた。