素敵な片思い

坂を上り、ケーブルに乗る手前で往復チケットを買う。


ケーブルに乗り込むと、杉浦くんは子供のように無邪気にふもとに一番近い所のイスを陣取った。


「ちょっとー、やめてよねぇ。他のひともいるんだから……」


「まぁまぁ、気にすんなって。コドモいねーし、いーんじゃね?」


ここにひとりいるじゃなーい!


言いそうになり、やめた。


だって、一緒に乗り込んできたのは、お上品な老夫婦だったから。


あんまり人気がないのか、20人乗りのこのケーブルは、たった4人を乗せて出発した。