素敵な片思い

瞬間、小玉さんはフッと笑う。


「そんな顔で、あんま見つめやんといてくれる?」


「…え?」


「今、心が弱っとるから…何か変な気持ちやわ」


変な気持ちって。


「あの…」


「わかってる。…こっちやろ?」


小玉さんはやんわり笑い、私の右手を彼の大きな手で包んだ。






ドキッ


心臓が跳ねる。






小玉さんの手は、思ったよりも温かくて大きくて…


これって、手を握られてるよーな…。







だんだん顔が火照ってくる。


薄暗い車内だけど、点灯し始めた街灯で…小玉さんの顔はまだはっきりと見えていた。






私を見つめる瞳は優しくて、小玉さんの指で次第に開かれていく私の手のひら…。


仕掛けたのは私なのに…逆に主導権を握られてしまう。


…動けない。





「…やっぱりな」


小玉さんは、私の手を握ったまま呟いた。


やっぱり。その言葉には、諦めの意味が含まれてるの?


小玉さんが開いたのは…


リングが入っているのと、反対の手だったから。