少し緊張しながら、怖ず怖ずと教室に入る。


「新山?」


ゆっくり顔を上げると、紘斗の顔にさっきの涙はもうなかった。

気のせい…?


「まだ帰ってなかったんだ?…って、ここ新山の席か。悪い!!」


笑顔で立ち上がる紘斗を見て、胸がズキッて変な音を立てた。


何でいつも通りなの?

……ううん、どうしていつも通りなフリするの?




「悲しいことがあったの?」


不意にそんな言葉があたしの口から零れた。


空を見るとあたしは気持ちが晴れるのに、紘斗はそうじゃなかった。

……そういえば、あたしがずっと空を見てるって…どうして知ってたの?

よく考えれば不思議。


「泣きたいときは、笑っちゃダメだよ」


余計なお世話だと分かってたけど、止まらなかった。