カレシ


良くんの話はこういうものだった。

1ヶ月の間にバイト先に新しい女の子が入って来た。その女の子にヒトメボレされて、付き合ってほしいと言われている。付き合う気はないのだけど、フラれたらその子はバイトを跳ぶと言っていて、今バイト先は人出がいなくてすごく困ってるから断れないと言うこと。


話の内容はすぐに理解できたけど…


「…え、じゃあどうするの?」

ケータイを持つ手に力が入らなくなってきた。

「1ヶ月待たせといてすごい申し訳ないんだけど…」

「うん…」

「その子の事が解決するまでもう1ヶ月待ってほしい」

えっ…何それ

「絶対ゆいとは戻るから!そしたらこんな思いはもうさせないから」

「あたしと寄り戻してから、その子の問題片付けるんじゃだめなの!?」

「中途半端に今付き合っても、ゆいに辛い思いさせるだろ…?」

「そんなの気にしないよ!」

「ゆい、俺の気持ち分かってほしい」

…そんなこと言われても
じゃああたしの気持ちはどうすればいいんだよ

しばらくお互いしゃべらなかった。

「次の1ヶ月は連絡とってもいいの?」

先に口を開いたのはあたし。

百譲って、連絡とれるならあと1ヶ月待ってもいいと思った。

けど

「連絡はとれない。俺はちゃんとけじめつけたいんだよ」

はぁ…なんで連絡もとっちゃだめなの?

もう良くんがわからなかった。
納得行かなかった。

寄りを戻したいって言ってるのに、そんな子のこと好きじゃないって言ってるのに、別に付き合いながらでも解決できる問題なのに、連絡くらいとれるのに!!



しばらくの沈黙の後、あたしが出した答えは

「夜まで考えさせて」

だった。


一人じゃ答え出せない。

もしかしたら良くんが言ってることはおかしくないかもしれない。


「じゃあまた夜、連絡待ってるから。俺、今日も大学終わったらバイトだから電話なら終わってからかけて」

良くんはそう言うと電話を切った。