カレシ


確かにそう言われてみると、
大輔と名乗るその人には見覚えがあった。

いっつも恭くんと、ふざけ合っていた人。



「…何か用ですか?」

あたしはちょっとイライラしてきた。

恭くん絡みの人とは、あんまり関わりたくないのに。


「これ、あいつから預かったよ」

その人はサッと紙を差し出す。

見ると、ルーズリーフが一枚折りたたんであった。


あたし憂鬱な気持ちになりながら、紙をうけ取る。


「読んでやってよ、あいつ…相当落ち込んでるから」


なんで恭くんが落ち込むんだよ、こっちのセリフだよそれ。



イラッとしながら、その人を見る。

するとその人の後ろにまきが、困った顔をして立っているのが見えた。


「あの、友達戻ってきたんで」

強めな口調でそう言うと、その人は後ろを振り向いてまきに話しかける。

「ごめんな、俺反対座るわ」

その人は席を立つと、机の前を周り、反対側に座った。

まきはあたしの隣に座ったけど、何にも言わない。

状況がよくわかってないみたいだ。



「まだ、なんかあるんですか?」


講義が始まるチャイムが聞こえる。

「講義始まっちゃうんですけど」

あたしは反対側の隣に座ったその人に話しかけた。