カレシ


講義室につくと、あたしは周りを見ないようにして席に座った。

もし先輩が来ていたら、顔を合わせるかもしれないから。



「ゆい、まきトイレ行ってくる」

まきはそう言うと、かばんを置いて席を立つ。

一人になったあたしは、机の上にうつ伏せてた。

しばらくすると、隣にまきが座る音が聞こえた。

うつ伏せたまま首を動かしてまきの方を見る。

「…はっ!!?」

あたしは驚いて固まってしまった。

さっきまでまきが座っていた所には今、知らない男の人が座っている。

しかもその人は、あたしを見ながら微笑んでいる。


あたしはそれを見ると、バッと体を起こした。

しばらく見つめ合う。



「あの~…そこ友達が…」



ちゃんとかばんが置いてあるのに座るなんて、どーいう奴だこいつは!

そう思ってあたしが言うと


「ゆいちゃん、だよね?」

その男は笑顔のままそう言った。


「え!?なんで名前…」


危険だ!変な奴だこいつ!


あたしはとっさに体をのけ反らす。

「あはは、驚かせてごめんな。俺、大輔。恭のツレ」

あたしはその言葉を聞くと、安心した反面、シュンと肩を落とすと視線を反らした。