「美並は早く、状況の建て直しを!」
佐倉が怒鳴り声が響いた。
そうだ、状況を確認しなければ。
「あ、あぁ、分かった。」
言われて、楓は操舵を握る。
あれ?私が操舵を握ったら、艦長席には誰が・・・。
「何やってらっしゃるの!操舵手は他の誰かに任せなさい!」
花子が叫ぶ。
え?
「・・・ア。」
美並は自らの立場を思い出す。
美並 楓。
操舵手兼・・・副艦長。
艦長、斉藤雄二が不在もしくは何かしらの理由により指揮が取れない場合において、指揮官の役割を果たす。
つまり、艦長、斉藤雄二が倒れた今、必然的に美並楓が艦長になったのだ。
‥‥‥‥…私が…艦長?
この現状を立て直すには、私が…指示を出す。
私が…すべての責任を背負う。
2年Sクラス全員の命が、この瞬間美並楓、一人の手にゆだねられたのだ。
「・・・アカン。」
そんなコトを言われても・・・。
「美並!」
「美並さん!」
花子と、佐倉の怒声が飛ぶ。
「アカン!無理や、うちに艦長なんてできん!うちは操舵手や。」
操舵輪を握る手が震える。
早く指揮を出してくれ。体制なら整えてやる。指示をだしてくれるならその通りに動いてやる。
だから、お願い・・・誰か・・・誰でもいいから指揮を出してくれ。


