伊集院花子が最初に挫折を味わったのは、小学校2年生のころだった。


 当然のように、焔学園にトップの成績で入学。


 祖父の跡を継ぎ、焔学園の理事長となった祖母。イギリス貴族の血を引く母、防衛省官僚の父を持つ超エリート家庭の中で幼少のころより、英才教育を受けていた花子にしてみれば、そんなこともタダの通過点に過ぎないことだった。


 彼女が目指すものは、後々に待つ戦艦ホムラのクルーに…いや、もっと言ってしまえば艦長に選ばれることだった。


 もちろん、それも彼女にしてみれば、出世のために必要な経歴の一つだったのだが。


 しかし、そんな花子の前にそいつは現れた。


 斉藤雄二。


 花子のように、優秀な教育を受けているわけではないのに、常に学年トップを走り続ける、まさに神童と呼ぶにふさわしい男。


 花子にしてみれば、これほどわずらわしい目の上のたんこぶはいない。


「目ざわりですわ!」


 真正面から、彼に向ってそんなことを口にしたこともあった。


「雄二は背が高いからね~」


 そして、そいつにいつも周りにいるのんきな顔をしている2人組。


「……そういうことを言いたいわけじゃないと思う。」


 山崎祐太と、カルラ=マルガリータ。


 祐太は別にして、なぜカルラのような上流階級の人間までこんな一般庶民と一緒にいるのか、分からなかった。


 小学校高学年に入ったころから、そこに美並楓も加わるのだが、花子にしてみれば、どうでもいいことだ。


「カルラさんは、どうして、あんな粗野な人たちと一緒にいるんですの?」


 カルラの家庭は自分の家とも交流がある、上流家庭の人間だ。


 なんで、あんな一般庶民と一緒にいるのか、理解ができない。


 ある日の社交界パーティ。


 偶然、その場に居合わせたカルラ=マルガリータに、そんな話を持ちかけた。