春。

済んだ空
心地よい風邪
新しい制服
なれない道


駅の改札口を出てフォームで電車を待つ。

言葉にはできない微妙な緊張感。

傷一つない鞄をギュッと握りしめ、電車に乗り込む。


今日から高校生になる、羽柴愛美(はしばめぐみ)16歳。

150㌢そこそこと小柄な身長、セミロングの黒い髪、真ん丸で黒目がちな瞳。

何処にでもいるようなごく普通の女子。


愛美は数日前、東京に越してきた。

この日入学する私立高校の学力は高く、愛美にとってかなり難関だったが、家から一駅という交通の便にいい面やきれいな校舎や可愛い制服からその高校が気に入った。

そして必死で勉強し、見事合格したのだった。

愛美には、その高校を選んだ理由がもう一つあった。