音のしたほうを反射的にみる。 そこには一人の人らしきものがいた。 Yシャツ以外、 ネクタイも靴も何もかもが 真っ赤に染められた燕尾服を着て、 頭部には 歪んだ顔で笑った、 真っ赤な熊の着ぐるみが被せてあった。 所々、引きちぎられたようになってて、 中の綿がはみ出ていた。 正直、体格だけでしか 男の人と判別できなかった。 さっきの声も この人のものとは限らないし。 訝しんでみていると、 目の前の男の人が声を発した。 「お嬢様」 その声はさっきと まったくもって同じ声だった。