「では、」 ダンボール箱を運び終わった彼は 玄関で深くお辞儀をして出て行った。 『良い人』だったなって思う。 世の中、 あんな人でいっぱいだったらなと、 心底思う。 でも、そんな事を思っていても、 今の彼は、 本当の彼ではない。 彼の本性では、ない。 さっきの彼の微笑みも、優しさも、 全ては仕事上の、サービス。 あたしに向けられた親切でも なんでもないのだ。