トランスプラント(移植)青春編

1千万円を渡した日から2週間が経った

「曽根さん、望月さんからお電話です」

電話を切り換えて

「もしもし、曽根ですが」

「望月ですが、日程が判りましたので

ご自宅に、ファクスしましたので

ご覧下さい」

「ありがとう、ございます」

それ以上の会話は、周りに知れる事を
恐れて電話は終わった。

自宅に妻順子は、そのファクスを
見ていた。

12月1日に中国、北京の病院へ入院し
検査をして、移植を待つ事になる。

待つ時間がどの位に成るか判らない
不安があるが、背に腹はかえられず
準備をはじめた。

週3回の人工透析、千裟の細い腕に
埋められた太いゴムのチューブ
その痛々しさが心を痛める。

今日も千裟は5時間の人工透析を
行っていた。

千裟の腎臓障害は母の遺伝かも
知れない?母、順子も腎臓が
悪く本当は、自分の腎臓を娘千裟に
生体移植したいが、自分の病気の腎臓では
千裟に役にたたない。

千裟のベッドの横で母順子は
娘の透析姿をみながら・・

「ごめんなさい、私の悪い遺伝子が

千裟をこんな風にしてしまって」

千裟は母の気遣う言葉が嫌だった。

「いつも、言ってるでしょう。

 その事は言わないでって」

本当は・・

<心配しないでママ>

そう言って母を安心させたかった。

5時間ベッドでジーとしてるのは辛い。
いつもは、衛がそばにいて、話をして
気を紛らしてくれるのに、今日はいない。

<しかたないか、17歳の元気な衛

陰気な病室で5時間もいるなんって>

千裟は自分の置かれた身の上を恨んだ。

思い切り走ってみたい。
めまいがして、心臓が口から
飛び出すくらい、
ほとばしる、汗をぬぐいながら
何時間も走りたい。しかし私には、
もうそんな運動はできない。

<つらいよ。さみしいよ。かなしいよ。>

私の心の痛みがわかる人、誰もいない・・
人は、失ってからその大切さを知る
愚かな動物なんだとだれかが言ってた。