トランスプラント(移植)青春編

「申し訳在りませんが現金で

お願いします」

千裟の父は不審に思ったが

「わかりました」

「それでは、明日の午後7時

この前の喫茶店リサでどうでしょう?」

千裟の父は、すばやくメモを取り

「明日の午後7時ですね」

「そうです。お待ちしております」

千裟の父は、家に電話をかけ
妻の順子に銀行に行って1千万円
降ろしてくるように伝えた。

午後7時10分前に喫茶店リサに
千裟の父が着くと望月が、
喫茶店の隅の方の席にいた。

「お待たせしました」

「いえ!いえ!まだ10分前ですよ」

ウエイトレスが注文をうけ立ち去った後
カバンの中から帝都鉄鋼の名前が書いてある
茶色の封筒を出して望月に渡した。

中身も確かめないで望月は

「曽根さん、中国との交渉が遅くても

3週間以内で判りますから、ご連絡いたします」

「ありがとうございます」

「領収書は書けませんので、

 預かり書をどうぞ」

その紙には、

<1千万円、預かりました。望月瑞樹>

実に簡単な文言であった。

忠雄は、脳裏に政治献金のやりとりを
想像した。特に営利目的の政治献金は
資金の出所を知られることが政治家にとり
致命傷になる為だ。

それと同じなのか?
中国での移植を公けにできない
事情があるのか?

しかし、忠雄は可愛い娘が病気で苦しんで
いる。早く苦しみから逃れさせたい。
娘を思う気持ちが、先走っていた。

家に帰り妻の順子に事の真相を話した

「多分、お金は政治家の

  活動資金になるね」

「そうですか、でも私達は、

別に悪いことをしてる訳ではありませんし」

千裟の母、順子は夫の不安な気持ちを
打ち消すように、やさしく夫の心を
癒した。