「せ、つ」


二人が振りかざした刃物が雪の背中と胸を切りつけたのだ。

父親の方はそれが酷く恐ろしく感じたからなのか、

自分の娘を殺してしまったと嘆き自ら命を絶った。

血の海の中に今漂っているのは茫然とした永と瀕死状態の雪であった。


「な、んで」

「私は、どちらも、好き、だから。どちらも、失いたく、なか、った」

「悪かった、俺が全て悪かったから。死ぬな。何処にも行くな」


大粒の涙を人生で初めて流した永。それを見た雪は力なく笑い、

この世界で最期の言葉を口にした。


「生まれ変わって、貴方の、元へ、行きます。すぐに、でも。そしたら、また幸、せ、に」


一筋の涙が流れたと同時に、雪は息を引き取った。

それと同時に、永は森全体に響き渡るような大きく泣き叫んだ。

朝が来るまでずっと、永は雪の亡骸を抱えたままただその場に蹲るだけであった。