だが次に連太郎が目を覚ました時、連太郎の頭には人肌のようなぬくもりがあった。

何処かの小屋かと思ったが、漆黒の空には月がある。


「気付かれましたか。気分は如何でしょうか」


連太郎の視界に入っていた漆黒は瞬く間に消え、代わりに飛び込んできたのは温かさを感じる白い光と、

見た事もない長い銀色の髪をなびかせた二十歳を超えているのであろう女の顔だった。

連太郎はこの時初めて自身がこの女の膝の上にいる事を知り、慌てて飛び起きようとした。


「気付かれた所申し訳ありませんが、今はもう少し眠っていて下さい。
直に元気は戻りますから」


女は連太郎の両方の目を手で覆い隠し、無理に目を閉じさせた。

その手の温もりに連太郎は心地よさを覚え、そのまま再び深い眠りへと落ちて行ったのであった。