「しまった。此の場所が何処だか分からなくなってしまった」


夢中になって進んでいた連太郎は、自身が何処にいるのかさえ分からない場所まで来てしまったようであった。

目印を探すにしても辺りは桜の薄桃色一色であり、それらしき物は見付からない。

人間もまた同様で、遊ぶ子供もいなければ寝そべる者もいない。

その光景に戸惑う連太郎。周囲をうろつき出口を探す以外に方法はなかった。

止めていた歩みを再び動かし、連太郎は自力で出口を探していた。

だが出口が見つかる事もなく、ただただ時間だけが過ぎ、

気付けば空には太陽はなくなり、代わりに色白の満月が姿を現していた。

昼から何も食べておらず空腹の連太郎は、

二度とこの森から出られないのではないかと言う不安に陥り、その場にくず折れた。