「此処に藤市(とういち)さんのご友人が住んでいるなんて、初耳です」

「そうだろうね。僕もあまり人には話したくはなかったから、
二日前まで内緒にしていたのだよ。怒るかい。みずき」


藤市と呼ばれた男はみずきと呼ばれた女に苦笑いを浮かべながらそう言ってみせた。

みずきはただ首を横に振り、怒っていない事を藤市に告げた。


「でも不思議です。このような森に人が住んでいる事が私には信じられません」

「誰も森の中に住もうとは思わないだろうからね。でも彼は良い人だよ。
君もきっと気に入る。ただ気をそちらには向けないでくれよ」