「言いたくないのでしたら、無理には聞きません。
どうか此の私の質問を聞かなかった事にして下さい」


空気でそれを読み取ったのか、みずきはそっと永を気遣うような言葉をかける。

だが永は首を横に振り否定の合図をしてみせると、真っ直ぐな瞳でみずきを見つめた。

その真っ直ぐな瞳にみずきは何故か胸を高鳴らせた。


「俺を嫌わないか。あの変わり者の藤市の妻になるお前だから、
杞憂に終わるかもしれないが」

「え、ええ」

「だったら言おう。藤市以外に誰も来ない理由を。そうなってしまった経緯もな」


みずきから目を反らし、湖の反対側を見るように遠くを見つめながら永はそれを語り出した。