両手でも足りない

「デートの間…、手、繋いでもいいの!?」

「恥ずかしいからやめてくれ」

詰め寄るあたしに、あからさまに嫌な顔をした。


ねぇ…、ほんとにあたしのこと好きなの?


いつの間にか見上げなきゃ海斗の顔が見れなくなって、頭を上げた。

すっと伸びてきた手が後頭部に乗って、わしゃわしゃかき回す。


「そんな顔で見るな!」

と、大きな声を出した海斗の顔が近づいてきて、頬に柔らかくて生温かい感触。


ほっぺたにキスをされた。


少し屈んで、幅のある肩、伏せた瞳、眉毛の形、伸びた鼻筋が視界に映り、ドキドキする。


「キスしたくなるから、その顔やめろ」

耳元で囁かれた声は低くて、海斗は男の子だって意識するのは十分すぎる。そして、海斗もあたしを意識してくれているってことも。


心臓がドキドキと鳴りやまない。


顔が離れて行って、ふわっと綻ばせた表情は普段より穏やかだった。

あたしが動けないでいると、さっきまでの態度は風で吹き飛ばされたのか、澄ました顔をし、満足げに家へと入って行った。


やっぱり、素直じゃないあたしは、

何あれ!余裕な顔して、ムカつくーっ!

と。海斗の家の前でひとり騒いでいた。





end.