両手でも足りない

「…イケなくはないけど」

少し考えたあとに。


「…今度からはトモ兄なんかじゃなくて。…俺に言えよ」


表情が見えないのが残念なくらい、海斗は今どんな顔してるんだろう。

真剣な口調でそう言われるとあたしの心臓は正直で。

ドキンっと跳ね上がった気がする。


言葉には出さず、コクンと頷いたままあたしは海斗の背中に顔を埋める。


寒くても風が強くても、自転車の運転が乱暴でも。お尻が痛くても。


ずっと一緒にいたいと思った。


あっという間に着いた家の前。

まだ一緒にいたいという思いとは裏腹に、あたしは自転車から降りる。


ガチャッと開いたお隣さん家のドアから、なんとも絶妙なタイミングでトモくんが現れる。