両手でも足りない

聞こえた。間違いなく聞こえたけど。


「だけどーっ!…かもしれないって、どういうことー!?」


あたしの聞き間違いじゃないなら…。


好きかもしれないって。

言ったかもしれないって…。


「…はあ!?どういうこと!?」

あたしの頭の中が整理されないまま、海斗だけがどんどん進んでいく。


「バーカ、遅せえよ!」

鼻で笑った海斗はさも嬉しそうに大笑いする。


「じゃ…、じゃあっ!…好きじゃないかもしれないって、こと!?」


だって今のはそうとも取れる発言。

気のせいかもしれないってことにもなるし。


否定的な言葉にあたしの頭は益々混乱してくる。


喜んでいいのか、落ち込んでいいのか…。

「できることなら、全否定したいくらいだ」

お前のことが好きだってこと。


最後に付け加えられた言葉が弱々しく聞こえたのは、あたしが泣きそうになったからか。


それ以上聞きたくなくて、耳を塞ぎたい思いでいっぱい。