だって。 課長の左手の薬指には華奢なシルバーリング。 そのリングがあるだけで、誰もがタメ息を吐き、落胆の色を示す。 遠巻きに見てるだけ。私もそのうちの一人。 何も言えなかった。 身体を重ねてしまってから課長は、毎週金曜日に私の家を訪れては、私を抱きしめた。 その度に私は溺れた。 溺れていたのは欲に、ではなく、間違いなく貴方に。