「『あなたの存在そのものが私の喜び』」

そして、そのまま目線を私にもっていき、私を見つめる。

「その文字の意味」

真顔でそう言われて、戸惑った。1つは、いつもは爽やかでこんな表情などしないのに、直樹君が寂しそうにしていたこと。そしてもう1つは、言葉の意味。田中さんは、この文字の意味を知っていたんだろうか。知っていて、私にくれたんだろうか。でもあのとき、躊躇もなく決めたから、意味などないと思う。

「そ、そうなんだ・・・。でも、偶々じゃない?」
「そうか?沙也のこと好きなのかもしれねえじゃんか」
「それはないよ・・・。謎な人だし」

だってあの田中さんだよ?胡散臭い人なんだよ?ありえないよ。・・・それに、私は直樹君が好きなのに。
目の前にいる、直樹君が好きなんだよ。だから、もし田中さんが私のことを好きでいてくれても、私は直樹君が好き。