柚音の言葉にぐっと表情を強ばらせるも、未亜は何も言わず続きを待った。


「っだいたい、あなたみたいに有名な人が簡単に辞められる筈ないでしょ。

仕事辞めたって、他に出来ることもないじゃない。」


「…母親としての、役割を果たすわ…」


か細く、それでもはっきりと未亜が言った。


その瞳からは何故か強い未亜の意志が感じられ、柚音は思わず怯みそうになる。


「…」


眉間に深い皺を寄せたまま、俯きがちにいている柚音を見てふぅ、と軽くため息をついた後、未亜が言った。


「…お母さんのこと、嫌い?」

「嫌い。」


予測はしていたのだろうが、嫌いと娘に真っ向から言われた未亜はやはりショックを受けたようで、辛そうにへらっと笑ってみせた。


そんな未亜に、柚音は何だか罪悪感に似た居心地の悪さを感じ、そんな思いを持った自分をも嫌悪する。


「…そっか」


落胆の色を含む声で未亜はため息混じりに言葉を返した。


柚音は母親に背を向け、部屋を出て行こうとする。


…が。


「…わかった。じゃあ、母親を辞める。


友達になろう!」